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2015.10.15

Colorless

 1日ぶりに出勤すると、私のデスクはいつもの休み明けと同様に、書類で埋め尽くされていた。
 コーヒーを飲みながらその山を片付けているうち、一枚の書類に貼られた付箋に気付いた。「神代大先生へ」と宛名書きしてあるそれは、他課の係長からの請求書発行依頼だった。私は時々、こういう呼び方をされることがある。その意味を深く考えたことは、あまりない。多分、深い意味なんて無いのだから。

 依頼通りの請求書を発行しておいてから、1日中をぼんやりと過ごした。
 周りのひとの話は、全く心に留めることなく聞き流した。風景がひどく色褪せて、現実感の乏しいモノクロ写真のように見えた。

 周りのものに、興味を持てない自分がいた。

「――だからこれ、来週まででいいわよね?」
「……え?」
 水瀬さんに問われて、不意に我に返った。彼女が手にしていた書類を見てようやく、自分たちが税務監査への対応策を検討していたことを思い出した。

「あ、あぁ……。ごめんなさい。いいんじゃない」
 一瞬言葉に詰まりながら答えた私に、水瀬さんは心配そうな表情を浮かべて問うた。
「ゆずき、大丈夫……?なにか今日、あった?」
「本当にごめんなさい。なんでもないの」
「そう……?それならいいけど。無理はしないでね」
 答えとは裏腹に、私はなんとなく、この希薄な現実の理由に見当がついた気がした。そのことは言わないで、水瀬さんと打ち合わせを進めた。

 それから自分のデスクに戻って、ぼんやり考えた。
 多分これは、燃え尽き症候群というものだった。先の3連休に、私はとても大きな――しかしそれは多くの場合にそうであるように、他人から見ればとても小さな――、試練を受けた。それを試練と表現するのが適切なのかは分からない。しかしそのために、私は1年間、準備を続けてきていた。その意味でそれは疑いなく、ひとつの壁なのだった。
 そうしたプレッシャーから解放されたことで、現実は現実味を失った。スリルのないゲームがもはや、ゲームではないように。

 平板に過ぎる一日を終えて、私はこうして北海道ケルナーを飲みながら日記を書いている。
 色のない日常も、そう長くは続かないことを願って。
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