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2015.09.24

Since...

 何もすることがなくて、私は役所へ行くことにした。ついつい先延ばしにしていた、転居届の提出をするためだ。
 原則として、引越しをしてから2週間以内に提出することになっている書類。提出するタイミングが合わずに、もう2年ほどが経っていた。提出しなくても、せいぜい選挙の入場券が届かないくらいで実害はない。が、マイナンバーが届かないのは少し都合が悪かった。

 役所で書類に記入して、受付に持っていった。
 一通り目を通した職員が、空白になっている「異動日」の欄を指差して告げた。
「神代さんですね。お引越しをされたのはいつですか?」
「2年前くらいですね」
 一瞬、彼女の動きが止まった。
「そうですか……」
 そう呟いて、何かを考えているようだった。私はあえて、何も知らなかったふりをすることにした。

「なにか、まずかったでしょうか?」
「いえ……こちらの書類は、お引越しの日から2週間以内に提出して頂くことになっているんです」
「あら、それじゃわりとダイナミックに期限やぶっちゃったみたいね」
 私の言葉に小さく笑った彼女は、滔々と説明をしてくれた。異動日から2週間以内、という期限を遅れて提出した場合は、その理由書を提出しなくてはならないこと。その理由書を役所経由で簡易裁判所へ届け出ること。過料として5万円以下の罰金が科される場合があること。

「ですが、」
 と彼女は続けた。
「こちらの異動日に関しては、私たちの方で『この日にしてください』と指定することは出来ないんです。あくまで、自己申告、という形をとっていまして……」
 今度は私が笑う番だった。彼女の提案を、私は受け入れることにした。
 胸元から万年筆を取り出して、彼女から書類を受け取る。空白となっていた「異動日」の欄に、頭の中で簡単な引き算をして、『平成27年9月10日』と記入した。お互い、あえて不要な面倒を抱え込むほど、若くもなければ暇でもなかった。

「おつかれさま、ありがとね」
 聡明な彼女に礼を述べて、私は役所を出た。
 市街地を覆う曇り空。阿蘇の噴煙は風に流されて南にたなびいていた。火をつけたショートホープの煙は、迎えた秋の中で静かに空へ立ち昇って行った。煙を眺めているうち、ここしばらく親友の墓参りに行っていないことに、私は気付いた。
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