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2015.09.14

Volcano

 阿蘇が噴煙をあげている。噴き上げられた煙の灰白色が、東の天蓋を覆っている。いつものそれより、少しは大きな噴火らしい。
 なんとなくそうするのが正しい気がして、私は安物のスコッチをウィルキンソンのソーダで割った。

 風に乗って徐々に姿を変える噴煙を眺めながら、ふと、ある随筆を思い出した。あれは幸田文だったろうか。細かい部分は忘れてしまったけれど、無気力に苛まれた人の話だったと思う。旅に出たその人は、目の前で火山が噴火する瞬間に出くわして活力を取り戻す。そんな話だったと思う。もしかしたら違っていたかもしれない。


 ハイボールを口に運びながら、ふと、想像する。私もそんな瞬間に出くわすことが出来たなら――。地面の底から轟き渡る、空気を震わせる大地の鳴動。凄烈に沸き上がる噴煙が、太陽目掛けて天を駆けるさま。幽玄さと劇しさとが矛盾なく同居する、噴火の一瞬。

 そんな光景を目の当たりにしたら、私も何かが変わっただろうか。
 だとしたら今回の噴火を逃したことが、少しだけもったいない。

 窓の向こう。阿蘇の上空で、噴煙は雲のように音もなく漂っている。
 いまは落ち着きを取り戻した、夜の前の静かなひととき。グラスの氷がぶつかるカランという音が、町を満たす冷ややかな空気に溶けていった。
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