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2015.09.08

At night

 よく晴れた1日の終わりに、この夜に相応しいアルコールを考えた。良い答えが思い浮かばなくて、コノスル・カルメネールをグラスに注いだ。安いデイリーワインだが、その価格以上の品質を有していることは間違いない。そんなワイン。

 静かな夜だった。時折。ワインがグラスに注がれる音だけがやけにみずみずしく、コココ、と部屋へ響いた。後に再び残る、静寂。
 ひとり、グラスを傾けながら今日の仕事のことを考えた。まったく下らない仕事。やり甲斐などありはしない。スプレッド融資の手続きなんて、1冊の本にいくつの読点が使われているかを調べるのと同じくらい、つまらなくて無意味な仕事だ。こんな仕事、いっそやめてしまえば良い。そしてわずかばかりの退職金で、どこかへ行けば良い。どこへ? 私の知らない、どこかへ。

 ワインを注ぐ。カルメネール特有の、ピーマンや香辛料にも似た香りが立った。なめし革のような、と形容する人もいるかもしれない。無論、すべて褒め言葉だ。

 プライベートのことを考えた。ここ数年のことを思い返す。何ひとつとして、良い方向へ進んだものは無かった。
 私は生きることに向いてないのだ、と。その事実を受け入れるべき時期が来ているのだった。いやとっくにその時期は来ていたのかもしれない。気付くべきタイミングはいくらでもあったはずだ。これから先の人生に何ひとつ、良いことなどありはしないのだということに。二日酔いで高校に通っていたときも、遊び半分でバウムテストを受けたときも、親友が自殺したあの夏の夜も。すべて。


 グラスが空いた。空になったグラス越しに、窓の外を見上げる。空のずっと、ずっと高い所で星が煌めいていた。私の手が決して届くことのない、遠い果ての場所。

 ポタリと落ちた雫の感触に、自分が泣いていることに気付いた。
 ワインに栓をして、リモンチェッロを取り出してショットグラスに注いだ。
 よく晴れた、涙の落ちる音さえ聞こえる、静かで寂しい夜。せめて飲む酒くらいは、甘くても良いはずだ。
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