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2015.08.31

Pray

「神代さんは、本当に美味しそうにコーヒーを飲むね」

 仕事帰り。時々寄る喫茶店のマスターに、そう声をかけられた。
 一瞬、ぽかんとしてしまう。この喫茶店のストレートコーヒーはたしかに美味しい。それは事実だ。けれど、私はこのコロンビアをそんなにも「美味しそうに」飲んでいるように見えるだろうか。

「コーヒーの楽しみ方はもちろん自由なのだけれど」
 と前置きしたマスターは、こう続けた。
「携帯も触らず、本を読むこともなくね。沈黙の中でブラックコーヒーを純粋に楽しんでくれる人は、少なくなったと思うよ」
 どこか懐かしむような口調。そういうものだろうかと思った。
 私は適当な言葉を返した。
「コーヒーを飲む時は、祈るように飲めと教えられまして」
「ははっ、いい教えだね」
 マスターはにっこりと笑みを見せた。

 適当に言ったと思ったその言葉は、しかし、あとから思い返してみれば、叔母の言葉だった。自分でも気づかないうちに、叔母の影響は、私の奥深い部分にまで浸み込んでいたらしい。
 そうしていつしか、私の中でコーヒーが祈りの刻になっていたことに気付いた。もちろんそれは、ブランデー混じりのその刻を、祈りと呼ぶことが許されるなら、の話だ。
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