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2015.08.29

On rooftop

 弱い雨が降っている。
 オタールを混ぜたコーヒーをボトルに詰めて、マンションの屋上へ出た。朝から降り続く弱い雨は、屋上をしとしとと濡らしている。

 誰もいない夜。
 屋上の隅には転落防止用の低い壁がある。パラペット。雨のかからない場所を探して腰かけた。ボトルからコーヒーを注いで、口へ運ぶ。
 遠くから、車が走る音が聞こえてくる。空は厚い雲に覆われていた。眼下を見下ろせば、夜の眠りについた町の姿。
 遠くで、イオンの赤い看板が下方からの照明に照らされている。吹く風の冷たさに、私はブラウスの襟を立てた。

 この時期はだめだ。色々なことを考えてしまう。
 屋上の片隅で、考えに耽る。それで何かが解決するわけではない。それは夏に別れを告げるための時間であり、夏を選んで自殺した幼馴染への餞だった。

 数杯のコーヒーを飲んだ。混じったオタールが、軽い酩酊をもたらす。夜の底で、思考はどこまでも落ちていった。虫の鳴く声が、冷たい夜にコロコロと響く。

 阿蘇の山に溶けた風車。それの放つ光を、見た。
 ハッと思い出す。あの風車を眺めながら、彼女が言った言葉。
「四季を」
 その言葉の先で彼女が言おうとしたことを、私は知らない。その彼女へ寄り添うために残された、唯一の手段。それが今では闇に溶けている、風車の灯を眺めることに他ならないように思えた。
 
 夜に溶けた阿蘇の外輪山頂で、今夜も風車はクルクルと廻り続けている。
 もうすぐここにも秋が訪れる。
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