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2015.08.22

Midnight

 窓の向こうをみやると、真夜中の空が広がっている。
 どこまでも続く夜の闇が、世界を塗り潰していた。

 闇の合間では、鉄塔の赤色が灯っている。
 大気の揺れにあわせて、時折、滲むような赤色を夜の合間に描く。
 音を持たない午前零時は、まるで止まってしまった時の中のよう。

 静かな静かな夜の色。
 モンブランのミッドナイトブルー・インクを万年筆に詰めて、一通の手紙を書いた。
 21金のペン先がしなりながら、便箋に文字を刻む。一文字ずつを、酩酊の中で丁寧に。

 書き直しはしないと決めていた。
 ゆっくり、たっぷりの時間をかけて、一通の手紙を書き終えた。
 夜の風と上弦の月を浴びた便箋の末部に、『かしこ』と刻んだ。

 窓の外には静かな夜が広がっている。
 書き終えた手紙を読み直しながら、グラスにシェリー酒を注いで飲み干した。

 もしも、この夜が明けないなら。
 止まってしまった午前零時の中で、私はいつまでも一通の手紙を書き続けていることだろう。その手紙は決して、完成をみることがない。


 夜は静かで、阿蘇の山は暗さの中にその姿を紛れ込ませている。
 グラスの底のシェリーに指先を浸して、切手の裏を濡らした。切手を封筒の左肩へ。
 シェリーの香りをまとったこの手紙が届く頃には、この夜も明けてしまっているだろう。
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