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2015.08.15

Reunion

 朝からサンドイッチを作った。定番のBLTサンドと、海老とアボカドを使ったサンドイッチ。
 今日は帰省している親族が実家に集まる日だった。その席に、私も呼ばれていた。
 サンドイッチとフランスパン、それから白ワインとシャンパンを持って実家へ向かった。もちろんその席に料理は用意してあるが、その料理は焼酎や日本酒のためのものだった。ぶどう酒には、ちょっと合わない。だから毎年、私がぶどう酒のための料理を持参している。

「あんた、また痩せたとじゃなかね?」
 実家に到着して、最初に母に言われた言葉がそれだった。
「酒ばっか飲んでそんだけ痩せとったら、すーぐ病気になるばい」
 濃い熊本弁で、会うなり説教をされた。どうでもいいが、私が作ってきたサンドイッチを食べながら説教をするのはやめてほしい。

「それはいいけど、ちょっとキッチン借りていい?」
 あと一品、ワインとシャンパンのための料理を作っておきたかった。キッチンを自由に使う許可を得て、私はコンロに火をつけた。オリーブオイルもニンニクも、私が知る、いつもの場所に置いてあった。それらを使って、手早くガーリックラスクを作った。作っている間に奥座敷からは乾杯の声とグラスがぶつかる音が聞こえた。もう宴会は始まったらしい。
 飲み始めていた親族の間に、焼きたてのラスクとシャンパンを出した。ちょっとした歓声が上がった。酔っ払いはいつでも、こういう分かりやすい反応をしてくれる。

「おぉ、ゆずきちゃん、久々だね。こっちおいで」
 手招きして呼んでくれたのは、叔父だった。私が大学生の頃。東京に居たときに、よく世話になっていた。
「お邪魔します」
 隣へ腰を下ろして、ビールを注いでやる。私のグラスにもビールを注いでもらって、再び乾杯をした。
「熊本はどう? 東京よりも過ごしやすかろ?」
「そうですね、この町が一番過ごしやすいです」
 でも、と私は一言、付け加えた。
「一緒に飲める人がいなくなったので、それが少し寂しいかもしれません」
 叔父は私よりも酒が強い。東京に居た時には、よく誘ってもらって一緒に飲んだものだった。
「口も上手くなったな?」
 そう言って叔父は上機嫌に笑った。

 そうやって昼過ぎまでを過ごして、実家をあとにした。
「ゆずきが相手してくれるから助かるわぁ」
 母の言葉に、軽く笑っておく。それが本心からの感謝なのか皮肉なのか、判断がつかない。
「お前が来ると酒が無くなるけん、もう来んでよかばい」
 その父の言葉は、翻訳すると『また来てほしい』であることを、私は知っている。このくらいの年齢になると、九州の男性は言葉と心とが乖離し始めるらしい。

 実家をあとにして、その帰り道で、町を見下ろす丘に寄った。
 供えたいものは沢山あったが、ジンのミニチュア・ボトルと線香だけを墓前に供えた。アースクエイクが好きだった、私の幼馴染の墓。
 この盆に、彼女は帰ってきてくれていたのだろうか。ひどく子どもじみた、そんな考えがまるで流星群の残滓のように頭をよぎって、少しだけ、泣いた。
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