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2015.08.12

Wish upon

 昼過ぎから降り始めた雨は、帰宅する頃になっても止まなかった。今夜は晴れて欲しかったのだけれど、仕方がない。玄関脇に傘を乾かしておいて、シャワーを浴びる。
 バスルームを出ると、つけっぱなしのラジオからは、フランク・シナトラの”Fly me to the moon”が流れていた。カーテンから顔だけを出して、外を確認する。
 私の一縷の望みは、静かに砕かれた。音もなく降り注ぐ雨が、相変わらず世界を濡らし続けていた。曇天の暗さとは対照的に、雨を浴びた大地の景色は鮮やかにきらめいていた。

 この雨は止まないらしい。
 当初の予定を変更することにして、私は本棚の前に立った。そこに収められた本は、そう多くない。ワイン関連のテキスト類、西洋哲学の書籍、経済学の書物に、数冊の詩集。あとは小説の類。麻雀の戦術書も少々。本棚は人をあらわすというが、私という人間をもっともあらわしているのは、ここに経理関係の本が一冊も存在しない、ということかもしれない。

 並んだなかから、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を1冊選んで手に取る。
 そのままキッチンへ向かった。ラジオから流れてくる音楽は流行のポップスに変わっていたが、先ほどのフランク・シナトラが耳から離れなかった。グラスにキューブアイスを詰めて、タンカレーとワイルドターキーとを、きっちり等量注いだ。このカクテルには、他の銘柄を使うことが許されていない。指定された種類のジンとウイスキーをグラスに注いで、片手で軽くグラスを廻した。本当はバー・スプーンでステアすべきところだが、それは些末な手順だった。

 片手で適当に作ったそのフランシス・アルバートを持って、ソファに腰を下ろした。
 20年ほど前に死んだ、偉大なジャズシンガーの名前を冠したそのカクテルを飲みながら、文庫のページをめくった。いつも通りの夜だった。明日の午後が、ペルセウス座流星群の極大時刻に当たるらしい。明日は晴れてくれるだろうか。
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