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2015.08.03

Season and

 私の町の東の方には、運動公園がある。球技場や弓道場を中心に、その周囲をジョギングコースがぐるりと巡る、どこにでもあるような運動公園だ。何もすることがない帰り道なんかには、時々、ここに来ることがある。来て、それで何かをするというわけではないけれど。

 公園入口のローソンでコーヒーを購入して、ジョギングコースを歩いた。すっかり傾いた太陽の下。夕暮れの色に染まった舗装のゴムチップが、昼の間に吸収した熱を放射しながら空気を焦がしている。暑さの沸き上がるコース上を避けて、木陰の芝生に佇んで東の空を眺めた。ここから眺める風車は、私のマンションから眺めるそれよりも随分大きく、そして鮮明に見える。

 あの風車を、かつての私はあまり好きではなかった。羽根とタワーの無機質な白色も、夜闇の中で瞬く航空障害灯も苦手だった。そんな風車を、この運動公園の片隅から眺めていたのは5年前のこと。
 そのとき。私は一人ではなかった。私の隣には私の幼馴染がいて、彼女は風車を眺めながら、こう呟いた。
「四季を」
 と。それっきり彼女は口をつぐんでしまって、だからその言葉の続きはもう分かりようがない。それを知る彼女はもう、この世にいないのだから。

 彼女が自ら死を選んで、もう5年。その間に19個の季節が過ぎた。その中に同じ夏は二つとなく、一度過ぎ去った冬はもう二度と訪れはしなかった。四季は同じように巡りながら、しかし着実に不可逆の時を刻んでいた。彼女の時だけが、あの夏の日で止まっていた。

「こんにちはーっ!!」
 私の横を通り過ぎた高校生の一団が、元気な声で挨拶をしていった。おつかれさま、と返しながら、コーヒーのカップを口に運んだ。コーヒーをゆっくりゆっくり飲みながら、いつまでもくるくると廻る風車を眺めていると、あの時に彼女が言おうとしていたことが掴める気がした。

 あれから20個目の季節。夏。
 彼女の眠る墓地では今年も、ひぐらしが鳴いてツユクサが花を開かせているはずだ。どこかから、蚊取り線香の懐かしい香りがふわっと届いた。盂蘭盆の時期も、もう近い。今夜は彼女が愛したアース・クエイクでも作ろうか。
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