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2015.07.29

Souvenir

 4日ぶりに職場へ行って、最初の仕事は土産を配ることだった。課内と、同じフロアの人たちに配ってまわる。ざっと60名。世間話をしながら土産を配るのは、わりと馬鹿にならない仕事だ。
 酒を飲む人には酒盗を、そうでない人には「かんざし」というお菓子を配った。酒盗を配った人からは、まず間違いなく、「朝から飲みたくなる」との感想を貰った。私の会社は大丈夫なのだろうか。

 土産を配り終えて、最後に部長へ渡す土産を選んでいたところ。
 後輩の黒沢君がやってきて、
「ご旅行に出てらしたんですか」
 と言う。彼は私の下のフロアだった。彼には酒盗を手渡しながら、肯定する。
「ちょっと高知にね」
 受け取った彼は、
「朝から飲みたくなりますね、これ」
 と聞き飽きたセリフを言った。
「酒飲みはみんな、そう言うみたいね」
「仕事中の酒飲みはみんな、そう言うでしょうよ」
 言われてみれば、そうかもしれない。飲めば仕事をしなくて済む。時々彼は、的を射た意見を言う。それが理解できる私も同類ということかもしれない。
 納得しながら、部長に渡す土産を選んだ。包装箱のなかへ無造作に並べておいて、告げる。
「ちょっと部長室に行ってくるわね」
「相変わらず律儀ですね」
 という黒沢君。
「律儀っていうか義理堅いんだよね、神代さん」
 隣にいた係長が話に加わった。
 私は反論する。
「休暇をくれたのは部長だから、当たり前だと思いますけど……」
「その考え方が既に江戸時代の武士みたいだよね。――というか、さ。部長室の部屋、ノックするの怖くない?」
 後半は黒沢君に向けての言葉だった。
「あぁ、分かります。あのドア分厚いから響くんですよね。しょっちゅう怒られに入ってますよ」
「通称、説教部屋な。説教された記憶しかねぇわ」
「部長室の入り口にスッポンの剥製が飾ってあるじゃないですか。あの剥製って、部長が生き血を啜ったあとの残骸らしいですよ」
「マジか。やべぇな、それ」
 男2人で妙な話に花が咲いている。
「……いってきますね」
 彼らを横目に、土産を持って部長室へ向かった。

 5分後。
 私は土産と引き換えに、1本のウイスキーを提げて戻ってきた。響。12年。部長が取引先から貰ったものらしい。さすがに遠慮したのだけれど、最終的に受け取ってしまった。逆に悪い気がしたが、どうしようもなかった。
 「神代さんが海老で鯛を釣ってきた」という黒沢君の言葉は、それにしても、あんまりだと思う。
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