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2015.07.19

Date?

 2週間前の約束を履行するために、昼前から街へ出た。
 風宮という、私の幼馴染の男を紹介して欲しいといった同僚、岩見さんの依頼を聞き届けてしまったのが2週間前だった。そして2人を引き合わせるため、街のダイニング・バーを訪れた。――どうして受けてしまったのだろうと思う。もちろん、岩見さんに非は一切ない。それは分かっている。

「ゆずきっ!ありがとっ」
 風宮に伝えた待合せ時刻の15分前。岩見さんと落ち合って、水だけを飲みながらいくつかのことを教えてやる。風宮が好むものや嫌うもの。そうした情報。私は一体何をやっているのだろう。

 風宮は時間通りにあらわれた。
「よう。メール、ありがとな」
 彼は私にそれだけ言って、小さく片手を挙げた。彼の整った顔を見ながら、たしかに岩見さんの言うように、彼の容姿だけは端正かもしれないと思った。それでもその性格が壊滅的であることを私は知っている。その性格を知れば、それ以上彼と付き合おうという気はなくなるはずだ。――どんな女性であっても。

 席についた風宮は、まず最初に岩見さんに手を差し出して、
「どうも初めまして。いつも神代がお世話になってるようで。お会いできて光栄です」
 丁寧な挨拶をした。猫をかぶるのが相変わらず上手な男だった。
「こちらこそっ、いつも神代さんにはお世話になっていてー」
 彼女もまた手を差し出す。二人の手が重なるその瞬間を見たくなくて、私は顔を伏せた。

 分からない、と思う。どうして岩見さんはこの場に私を呼んだのだろう。どう考えても私は邪魔だ。
「ゆずきもいてほしいなー。何かあったらフォローしてほしいっ」
 そんなことを言われてこの場所に居たのだけれど、フォローなどする必要はなさそうだった。二人で十分に、会話を楽しんでいる。私が口を挟むまでもなかった。

 1時間ほど経った頃、風宮は高校の時の話をした。
「ちょうどこんな時期になると、うちの高校では課外授業なんかがありまして」
 あの話だろう、と大体の想像がついた。ボンベイ・サファイアとピースと、夏の青空に関する話。私と風宮と、もう1人だけが知る話をこうして軽々しく話せる神経が、私には理解し難かった。

 私は彼の話の途中で退席した。喫煙のために設けられたスペースへ行って、ショート・ホープに火をつけた。理由のない苛立ちであることは自覚できていた。ただ、そこに理由がない理由が、私には分からなかった。

 その店で3本のワインを開けて、会計を済ませた。二人はこれからバーに行くのだという。
「一緒にいこうよ」
 と言う岩見さんの言葉に、私は首を横に振った。ここから家までは時間がかかる。早めに帰路に着きたかった。そう告げたところ、
「お前さ、なんか今日、苛立ってない?」
 風宮が言った。
「別に」
 と答える。
「嘘だろ」
「嘘じゃないわよ」
 嘘を言ったつもりはなかった。ただ本当のところを、私自身、よく分かっていないだけだった。

 二人に別れを告げて、一人で電車に乗って帰った。私は何をしているのだろう。今日、幾度となく頭によぎったその疑問を引きずりながら肥後大津の駅に着いて、家へ帰ってギムレットを一杯だけ作って飲んだ。
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