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2015.07.18

Ink

 澄み渡った晴れ空が広がっている。久々の青空だ。
 午前11時を待って、ジンをあけた。今日の空の色によく似たボンベイ・サファイア。
 霜をまとったボトルから、氷点下に冷やされたジンをグラスに注ぐ。わずかに粘度を帯びながらグラスに零れ落ちてゆくさまも、立ち昇るジュニパーベリーの香りも、私のもっとも愛するもののひとつ。窓の向こうには廻り続ける風車の白と、草原の緑とが鮮やかに光っている。クーラーを効かせていても、暑さが窓から忍び込んできた。暑い。窓を閉め切ると、国道を走る車の音が妙に大きく聞こえた。

 ふと、一篇の詩が頭に浮かぶ。"The Road Not Taken"。ロバート・フロストの詩。
 ジンのグラスを置いてルーズリーフを取り寄せながら、万年筆を握った。2行ほどアルファベットを刻んだところで筆記体がかすれ始めた。構うことなく筆を走らせる。18金のペン先が小さくしなりながら、紙上を擦る音がかすかに響く。完全にインクが切れてしまうまでに書けたのは、詩の半分ほどだった。
 替えのインク・カートリッジを探す。カートリッジを保管しているその場所を探して分かったことは、替えが切れていたということだった。舌打ちでもしたい気分で、外出の準備をした。薄く化粧をして髪を整える。いつもの半分の時間でそれを済ませて、部屋の扉を開けた。
 暑さの湧き上がる町を歩きながら、万年筆のことを考える。いっそのこと、使い捨てのカートリッジ式からインクを吸入するコンバーター式に替えようかと考える。そうすればインクが切れることもないし、なにより、好きな種類のインクを使うことが出来る。ふと思いついたそれは、考えてみれば悪くない案だった。そうだ。それが良い。インクの色はブルー・ブラックでも良いし、最近は月夜色のインクも出ていると聞く。どんな色が良いだろうか――。さっきまで考えていた詩のことをすっかり忘れている自分に気付いた。
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