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2015.07.06

Business trip

 福岡への出張は午後2時には終わった。出張自体は滞りなく終わったものの、定時3時間前という微妙な時刻に、すこしだけ逡巡する。真っ直ぐ帰宅するには、さすがに気が引ける時間帯だった。
 土産の「めんべい」を手に提げながら、携帯を取り出して職場の経理課直通番号を押した。いずれにせよ、出張終わりの連絡を入れなくてはならなかった。数回のコールの後、出たのは後輩の小川さんだった。

「おつかれさま。神代だけど、課長いるかしら?」
「あっ、おつかれさまです。すみません、課長はちょっといま席を外していまして」
「それじゃ係長をお願いできる?」
「係長もちょっと……いま経理課にいるの、私だけなんです」
 嫌な予感がした。課長だけならまだしも、係長も他の職員までも同時に席を外すというのは、そうそうあることではない。
「なにかトラブル?」
 尋ねながら、自分でも声がかすかに緊張しているのがわかった。
「いえ、えぇと……」
 歯切れの悪い彼女に、不安が募る。説明し辛いことなのだろうか。多くの面倒なトラブルがそうであるように。
「何があったのか、ゆっくりでいいから話してみて?」
「あの、さっき消防車がすぐ近くを通ったので、皆さん、見に行かれました」
「……そう」
 心配した自分が馬鹿らしかった。消防車で騒げるのは小学生くらいまでだと思っていた。

「悪いこと聞いたわね」
「いえっ、そんなことないです。あ、そうだ。課長から伝言ありました」
「あら、そう? 何かしら?」
「出張終わったら直帰していーよ、だそうです」
「そう、了解。それじゃあおつかれさま。ありがとね」
 おつかれさまですー、という言葉を聞いてから電話を切った。

 頭の中で計算する。これから帰ると、4時くらいには家に着くことになる。どうしようかと考えた。手に提げた紙袋に目がいく。福岡名物、めんべい。ビールにとても合う、明太のせんべい。32枚入り、1000円。味は申し分ないものの、もう少し方向性を練り直すべきかもしれなかった。一応、女として。
 石村萬盛堂の「ショコラボア」かチョコレート・ショップの「博多の石畳」か――。どちらにしようかと考えながら、私は再び博多の街へと足を向けた。
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