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2015.06.30

A mountain of

 一昨日からの夏風邪は、今朝にはすっかり治っていた。いつもより、少しだけ早い時間に出社した。
 オフィスに入り、デスクを目の前にした瞬間。心の中でため息を吐いてしまった。そこには書類の山がうず高く積み上がっていた。たった1日でこれだ。1ヶ月休み続ければ、月まで届く高さになるかもしれない。そういえば、と思い出す。1枚の紙を42回折ることが出来れば月まで届くと聞いたことがあった。本当だろうか。紙の厚さを0.5ミリだと仮定して、月までの距離が38万キロ。デスクの引き出しから電卓を取り出して計算をしようとして――はっと我に返った。これがまぎれもない現実逃避であることに気付いたからだ。
 
 かといって、当面はその山を片付ける気にもならなかった。とりあえず放っておくことにして、コンビニで買ってきたブラックコーヒーを取り出した。
 ゆっくりとコーヒーを飲んでいるうちに、経理課員が出社してきた。その一人一人に頭を下げて、昨日の休みを詫びた。全員が体調を心配してくれて、そのあとに「無理しないで休んでていいのに」と付け加えた。私は軽く笑っておいた。昨日、ポトフを作って赤ワインを飲んでいたとは言えなかった。

 始業時刻を過ぎてから、ようやく書類の山にとりかかった。半分が決裁、あと半分が請求書だ。それらを選別しながら、判子を押してゆく。と、1枚の付箋がデスクに貼られていることに気付いた。ウサギの絵が描いてある、メッセージ用の付箋。差出人の想像はついた。人事課の水瀬さんは、病的なまでのウサギ好きだったからだ。
 折りたたまれたその付箋を開いてみる。やはり水瀬さんだった。綺麗な文字でこう書いてあった。
「もう大丈夫? 快気祝いに、飲みに行こうー」
 小さな笑いが漏れた。どこかまだ行っていない、良いバーはあるだろうか。書類の山を片付けながら、私は記憶の中にバーを探し始めていた。
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